公募情報

①領域の概要

有機合成化学は、入手容易かつ安価な有機原料から超付加価値を有する高次複雑系分子を創成する、モノづくりを支える学術基盤である。現在、有機合成化学の分野にもデジタル化という大きな変革の波が押し寄せており、日本の有機合成化学が世界をリードし続けるためには、有機合成に破壊的イノベーションを起こすデジタル有機合成(実験科学と情報科学の異分野融合)の基盤を世界に先んじて構築することが急務である。本研究領域では、有機合成の多様性に対応した独自のデジタル化プラットフォームを構築するため、人工知能(AI)を徹底活用した自動化法(分子構造自動設計、合成経路自動探索、反応条件自動最適化、バッチ→フロー自動変換、自律的自動合成システム)の開発でムダを徹底排除し、革新反応・革新分子創出の超加速化を実現するとともに、自動化法開発の基盤となる、有機化学の機械学習に最適化した本研究領域独自のデータベース(DB)の構築を行う。

②公募する内容、公募研究への期待等

本研究領域の研究組織は、研究項目A01(AI支援による反応制御の深化)、研究項目A02(AI支援による合成手法の深化)、研究項目A03(有機合成を支援するAI手法の深化)の3組織体制である。領域研究の推進には実験科学(有機合成化学)と情報科学をいかにして機能的に融合させるかが鍵であり、①機械学習(ML)のための信頼性の高い反応データを迅速に集積することと、②MLによって予測・考案された分子、反応条件、反応経路を、実際に実験によって実証することが重要である。研究項目A01、A02の公募研究はデータベースへのデータ提供やAIやMLの活用に積極的に取り組むこと、研究項目A03の公募研究は実験グループと共同で研究することを前提とする。

研究項目A01は革新的な選択性の高度制御(逆転)法の開発(原石発掘)・機構解明とその応用を目的とする。公募研究では、新触媒の開発や電気や光エネルギーの新活用法の開発などによって、革新的な選択性の高度制御法(特に計画研究でカバーできない多様な“新奇反応”)の開発研究を行い、多様な有機合成反応の制御法を深化させる研究者の応募を期待する。革新反応の開発には徹底した反応機構解析が大切であり、機械学習を使った手法で、反応機構解析に切り込むような研究提案も期待したい。

研究項目A02はデバイスの深化による有機合成の自動化を推進し、テクノロジーをサイエンスに昇華する新学理の創出とその応用を目的とする。公募研究では、バッチ反応のフロー反応への変換手法や機械学習に必要な信頼性の高い全実験データの迅速収集システムの開発、さらには、インライン分析を組み込んだ自律的な反応条件の自動最適化システムの構築などのデバイスや自動合成システムの深化を通じて、本研究領域に貢献できる研究者の応募を期待する。

研究項目A03は有機合成のためのAI手法の深化を目的とする。研究項目A01とA02の研究支援を行い、分野融合による情報科学の新学理の創出を生み出す。公募研究では、複数パラメータのパラレル最適化による革新的な基礎反応の発掘や開発効率の超加速化、反応を制御する主因子の推定、反応機構の理解と予測のためのAI手法の開発の他、有機化学の多様性に適した新たな分子・反応の記述子開発と、新たなMolecular (Reaction) Generation(分子・反応の設計法)の開発を行う研究者の応募を期待する。また、逆合成経路設計や順合成経路設計などに取り組む研究者も求める。計算科学と機械学習の融合的な研究提案も期待したい。DB構築には、多様な機械学習の手法の研究が不可欠であり、単純な予測モデル構築に留まらない独創的な機械学習の手法研究提案も期待したい。

本研究領域は、有機化学の大型共同プロジェクトとしては新しい試みである「データサイエンスと有機合成の融合による学術変革」を目指すため、共同研究におけるデータに関する認識を改めて確認する必要がある。MLに最適化した本領域独自の次世代型DBの構築を行うため、通常は表に出ない副反応やネガティブデータの収集や、官能基評価キットを利用した網羅的な化学選択性のデータ収集を計画しており、研究領域の目的を理解し、実験データの提供(クローズ・シェア・オープンの3段階を明記)に積極的に貢献でき、それらのデータの構造化などを行える研究者の応募を期待する。若手・女性研究者の積極的な応募も期待する。

③公募する研究項目、応募上限額、採択目安件数

研究項目番号 研究項目名 応募上限額(単年度当たり) 採択目安件数
A01 AI支援による反応制御の深化 350万円 16件
A02 AI支援による合成手法の深化 350万円 8件
A03 有機合成を支援するAI 手法の深化 300万円 7件

 

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