ニュースレター

【国際学会参加助成2023】The 10th Jubilee Singlet Fission Workshop: 一重項分裂のl国際会議

大阪公立大学 大学院工学研究科 池田研究室(A01池田G)博士後期課程1年 長岡 朋希

この度,デジタル有機合成の国際学会参加助成によるご支援のもと,2023年6月17日から20日の4日間,アメリカ コロラド州 エステスパーク ダオハウスにて開催されたThe 10th Jubilee Singlet Fission Workshopに参加してきましたので概要を報告いたします.

このWorkshopの主要トピックは,太陽電池や光化学反応への応用が期待される一重項分裂(Singlet Fission)です.第一人者であるコロラド州立大学・Josef Michl教授が中心となってアメリカ国内でずっと開催されているのですが,今回の記念すべき第10回目はコロナ禍のために延びに延び,2019年以来4年越しの企画・開催だったそうです.一方,私にとっては初の海外学会参加となりました.関西国際空港→インチョン国際空港→ロサンゼルス国際空港→デンバー国際空港という合計30時間の旅程を経て,まずはデンバーまで到着しました.長旅とデンバー(標高1600 mで,愛称はMile High City)での空気の薄さで,気力と体力を失いつつあったのですが,本場のハンバーガーで回復しました.

翌日(開催初日)にシャトルバスにてさらに高地の標高約2800 mにある学会開催場所のダオハウスに向かいました.ホテルのフロント横の酸素吸入器(写真1)には驚きましたが,お世話にならずにすみました.参加者はアメリカだけでなくヨーロッパやオーストラリアなど,一重項分裂関連の合成・理論・測定の研究者40名ほどでした.夕刻からのレセプションの後にMichl教授のOpening Remarksがあり,一同,一重項分裂材料開発の何たるかについて基礎的な部分を再確認しました.

ポスター発表内容

Development of a Cross-conjugated Singlet Fission Material with a Wide Excited Singlet–Triplet Energy Gap

Tomoki Nagaoka1, Yasunori Matsui1,2, Masaaki Fuki3, Takuya Ogaki1,2, Yasuhiro Kobori3, Hiroshi Ikeda1,2*

1Grad. Sch. of Eng., Osaka Metro. Univ.; 2RIMED, Osaka Metro. Univ.; 3MPRC, Kobe Univ.

 

2日目は朝から8名の講演が行われました.理論の話は私には難しかったのですが,実験系の話には自身の研究の参考になる内容もいくつかあり,非常にためになりました.夜には,最初のポスターセッションが行われました(写真2,アイキャッチ).英語による海外現地でのポスター発表は自身にとって初めての体験であり,自分の英語がちゃんと英語圏の人に通じるのか,英語による質問を聞き取れるのか,不安を感じていました.しかしながら,英語での口頭発表の経験や,長崎でのポスター発表の経験(7th Gratama Workshop,2023/5/10-12)を活かして,はっきりとした英語と身振り手振りを意識したおかげか,ポスターを聴きにきてくれた方も相槌を打つなど,自身の英語がちゃんと伝わっていることがわかりほっとしました.質疑応答の際も,相手からも私が日本の学生とわかった上でゆっくりとした英語で質問していただき,私にも十分理解することができました.私以外のポスター発表者には,機械学習を用いた新規一重項分裂材料の開発に関する研究を行っている人もおり,データサイエンス活用の可能性を改めて感じました.

3日目の午前中までにすべての講演が終了して,午後は自由時間となったので,私,指導教員の松井康哲先生,東京大学の田村宏之先生,その他3人の欧米人とダオハウスのすぐ横にある山頂(約3500 m!)を目指しました.日本人3人衆は空気が薄いことに加え,欧米人の体力に任せたハイペースについて行けずに途中でリタイアしましたが,高地トレーニング並みの運動ができ,良い気分転換にもなりました.ちなみに欧米人3人は無事に登頂したとのことでした.

最終日の4日目は2度目のポスターセッションを行った後,最後の昼ごはんを食べ,各々ダオハウスを出発しました.復路は往路と逆のコースを単純にたどりましたが,日付変更線とフライトの関係で足かけ3日間かけての帰国となりました.

最後に,あらためまして今回のデジタル有機合成の国際学会参加助成に御礼申し上げます.私にとって今回の国際学会参加は非常に有益で,貴重な経験となりました.一重項分裂に関する最新の研究成果(有機合成や機械学習を含む)を知ることができたほか,英語力向上にも繋がりました.そして,僅かかもしれませんが研究者としての成長を実感することもできました.今後も様々な国際会議でよい成果を発表できるよう,引き続き研究活動に邁進します.

TOP