ニュースレター

【国際学会参加助成2024】JSAMA-10に参加して

大阪公立大学 大学院工学研究科 池田研究室(A01池田G)
博士前期課程1年 宮地 龍一

この度,デジタル有機合成の国際学会参加助成によるご支援をいただき,2024年10月31日〜11月1日に中国・上海で開催された「The 10th ECUST-HU-TKU-KIST-OMU-IHU-KMITL-UTAR-TNU-HUIT Joint Symposium on Advanced Materials and Applications (先端材料とその応用に関するアジア10大学による合同シンポジウム,JSAMA-10)」に参加して参りました.この学会は,日本,中国,韓国,台湾などのアジア諸国・地域の10大学による材料化学系の合同シンポジウムで,今年は中国の華東理工大学での開催でした.
私はこれまでに何度か海外旅行の経験があったのですが,海外学会参加は初めてで,まず最初の関門となったのがビザの取得でした.日本のパスポートがあればかなりの国でビザが免除されますが,2024年10月現在,中国への入国にはビザが必要となります.要旨の投稿後にホスト大学のLei先生から書類を頂いて手続きし,少々不安を感じつつも,なんとか無事に申請手続きを終えました.大阪市内のビザセンターでは,なんとか無事にビザを受け取ることができましたが,まだコロナ禍前の世界には戻りきっていない一端を感じました.
学会当日は,上海の壮大なビル群や,縦横無尽に走るバイクに圧倒され,期待と緊張が入り混じった心境で会場の華東理工大学に向かいました.JSAMA-10は,中国や日本をはじめ,ベトナムやパキスタンなど東南・南アジアから約70名の研究者や学生が参加しており,有機化学のみならず無機化学や高分子化学といった幅広い分野の方々と交流する機会がありました.地域ごとに異なる課題やアプローチに触れることで多くの刺激を受けました.特に,エネルギー分野の研究が進む東アジアや,食物保存技術が重視される東南アジアの状況に触れ,化学研究の多様な視点を学ぶ貴重な機会となりました.
ポスター発表は2日間で計4回行いました.私は,結合回転を抑制した剛直な新規エネルギーアクセプター連結体を用いたフォトンアップコンバージョンの研究について発表しました.光波長変換技術であるフォトンアップコンバージョンは,太陽電池や光触媒の利用可能な波長を広げる技術として注目を集めていますが,依然としてその効率は不十分であり,一部のメカニズムも未解明です.本研究では3種類の新規な光波長変換分子を合成して,この問題に取り組みました.最初の2回のポスター発表ではなかなか来訪者がいませんでしたが,1日目の午後に行われたショートトークを機に3回目以降は多くの方が訪れてくれて有意義な議論ができました.例えば,華東理工大の学生からは,物性評価における比較物質の妥当性についての詳細な質問を受けたり,兵庫県立大の学生からはアミノ化の際のBuchwald–Hartwig反応の提案など,具体的な助言をもらい,有意義な議論を交わすことができました.緊張と慣れない英語のため,始めは議論を深めることが難しかったものの,何度も聞き直したり,言い換えて説明したりするうちに,相手も親身に話を聞いてくださって助かりました.
また,特に関心をもった講演としては,So-Hye Cho先生(KAIST,韓国)の「酸化チタンの触媒挙動に対する新たなSiO₂シェルの効果」が挙げられます.緻密な分子設計が行われており,私の研究内容の応用先となり得る技術であり,大変興味を引かれました.質疑応答の際には質問する機会を得ることはできませんでしたが,昼食時に思い切って分子設計について質問したところ,つたない英語にもかかわらず親切に対応していただきました.学会期間中は,日本以外の研究者・学生とも豪華な食事を囲みながら交流し,充実した時間を過ごすことができました.さらに,帰国前夜には中国や台湾,韓国の学生たちと上海の街を夜遅くまで散策し,互いの研究や将来について語り合う貴重なひとときを楽しみました.
最後になりましたが,学会参加にあたりほぼすべての費用をご支援いただいたデジタル有機合成国際学会参加助成事業に,深く感謝申し上げます.

ポスター発表内容
P18 Green-to-Blue Photon Upconversion Using an Anthracene Dyad Linked by the Tröger’s Base Skeletone
Ryoichi Miyachi1, Yasunori Matsui1,2, Takuya Ogaki1,2, Hiroshi Ikeda1,2*
1Grad. Sch. of Eng., Osaka Metro. Univ.; 2RIMED, Osaka Metro. Univ.

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